秋の気配を感じ始めた10月初め、いよいよプリンセスパイン厚板を引き取りに長野県松本市の木の総合学研究所(代表:阿部藏之氏)へ行ってきました。長期自然乾燥による木材の冨貴化が研究テーマの一つである当研究所で、20年以上も丁寧に長期自然乾燥が行われてきた岐阜県産 樹齢140年の厚板からは、樹齢が60~70年の通常入手できる木材が発する香りとは明らかに異なることがわかります。これが樹齢や自然乾燥期間によるものなのか、それとも微妙な地域によるものなのか、まだまだこれからの研究課題です。
2000×910×t90は、おそらくこの先出てこないだろうと思われる国内最大級の香木厚板です。一人で移動させるには心許なく、できれば補助が欲しいレベル。とはいえ、このような時には長年の経験が多少は役立ち、台車を使い一人で工房内を移動させます。
香木とはいえ強い香りではないため室内に入れてしばらく経てば、鼻は慣れ香りを感じなくなりますが、2019年の分析(岐阜県生活技術研究所に依頼)によれば、木材は常に微細放散成分を揮発しているので室内の空気質には明らかな変化が現れます。
実際、室内に入れてしばらくすると、最新の空気質測定器の数値がアップ。明らかに室内空気質が変化していることが確認できました(この変化についてはさらにデータを収集し別稿にて解説予定)。
広葉樹軟材や針葉樹を仕上げるために特別に作られた名工による鉋(華甲 寸六 筋違い八分勾配 鍛造特注:碓氷健吾作、台打ち:青山鉋店 青山駿一作)も用意し、この後プリンセスパインを仕上げていきます。
当初、すぐに販売を考えていましたが、多くの方にこの貴重な材に触れていただく機会を作るため、しばらくは工房収蔵品とする方向で考えています。通常、工房は解放していませんが、ご予約をいただければ対応致します。秋の高山旅行に家具工房見学を加えてはいかがでしょうか。ご希望の方は、Contactよりご予約ください。